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インドに対する日本政府の動向
マンモハン・シン・インド首相の訪日
2013-05-30
I. 日程概要
(1)マンモハン・シン・インド首相は、コール夫人とともに、5月27日から30日まで公式実務訪問賓客として訪日。
(2)29日午前に天皇皇后両陛下の御引見、同日夕刻に安倍総理との間で日インド首脳会談が行われ、その後、共同声明(骨子別添)への署名が行われた。また、両首脳立ち会いの下、八木駐インド大使とワドゥワ駐日インド大使による、円借款案件「ムンバイ・メトロ建設」(710億円)の交換公文の署名が行われると共に、同日午前に開催された第5回ビジネス・リーダーズ・フォーラム(BLF)の共同議長である米倉経団連会長とカルヤニ・バーラト・フォージ会長から同フォーラムの報告書を受領した。会談に引き続き、日印政財界要人、有識者等約80名を招いて安倍総理夫妻主催晩餐会が開催された。
(3)岸田外務大臣(29日午後)、茂木経産大臣(29日午後)、山口公明党代表(28日午前)、海江田民主党代表(29日午前)による表敬を受けた。
II.首脳会談概要
1.冒頭
安倍総理から、日インド関係は、2006年に安倍総理とシン首相が合意した「戦略的グローバル・パートナーシップ」に基づき、深化拡大しており、その一層の強化に努力したいと述べた。これに対しシン首相から、日印関係の発展は喜ばしく、現状に満足することなく、更に関係強化に取り組みたいと述べた。
2.二国間関係
(1)11月末から12月初め頃、天皇皇后両陛下にインドを御訪問頂けるよう、両国間で調整していくことが確認された。
(2)政治・安全保障分野に関し、二国間の海上共同訓練を一層充実させること、インドによる救難飛行艇US-2の導入に向け、合同作業部会を立ち上げること等につき一致した。
(3)民生用原子力協力に関し、協定の早期妥結に向け交渉を加速させることが確認された。
(4)経済分野に関し、安倍総理から、インド工科大学ハイデラバード校への支援として約177億円の供与を決定した旨伝達。
(5)デリー・ムンバイ間産業大動脈構想やインドの高速鉄道等、大型インフラ分野及びエネルギー分野でも協力していくことを確認。特に、高速鉄道については、ムンバイ・アーメダバード間のルートを念頭に、共同調査を行うことで一致。
(6)安倍総理から、ビジネス・マッチング等を通じ、インドへの投資拡大を後押ししたいと伝達するとともに、金融・税制や投資面の一層の規制緩和を期待する旨述べた。
(7)宇宙分野をはじめとする新しい分野において、日インド間で協力することで一致した。
3.地域情勢・グローバルな課題
アジアの地域情勢に関する意見交換を行うとともに、国連安保理改革及び軍縮・不拡散等、国際的な問題について引き続き協力を行っていくことを確認した。
III.岸田大臣による表敬概要
1.冒頭、岸田大臣から、日・インド「戦略的グローバル・パートナーシップ」が着実に進展していることは大変喜ばしい、安倍政権は日・インド関係の強化を重視している旨述べた上で、天皇皇后両陛下にインドを御訪問頂けるよう調整しており、本年は日・インド両国にとって歴史に残る一年となるであろう、外交の責任者として、自分も両国関係の深化、拡大に尽力したい旨述べた。
2.これに対しシン首相から、日本との「戦略的グローバル・パートナーシップ」を一層深化、拡大させたい、また、インド国民は日本と日本国民に深い敬意を抱いており、誰もが日本との緊密なパートナーシップを望んでいる、2011年に発効した日インド包括的経済連携協定の下で、インフラや製造業を中心に、日本企業によるインドへの投資が一層拡大することを願っている、また、経済分野だけでなく、政治・安全保障分野へも両国の協力関係が広がることを期待している旨述べた。また、天皇皇后両陛下のインド御訪問を心から歓迎するとともに、御訪問が成功するよう全力を挙げて協力したい、自分は、インド首相として過去9年にわたり日・インド関係の発展に尽力してきたが、引き続き努力していきたい旨述べた。
IV.評価
(1)2006年に安倍総理とシン首相との間で構築に合意した「日インド戦略的グローバル・パートナーシップ」の発展を改めて確認することができた。11月末から12月始め頃に、天皇皇后両陛下にインドを御訪問頂けるよう調整していくことでも一致した。
(2)シン首相の訪日は今回首相として5回目であったが今回の訪日を通じ、政治・安全保障面の協力の一層の強化を確認するとともに、経済面においては、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)、インドの高速鉄道、ムンバイ・メトロ建設案件等への円借款供与等について多くの具体的な成果があった。また、原子力協力に関し、協定の早期妥結に向けて交渉を加速することで一致した。地域・地球規模課題についても有益な意見交換を行い,戦略的グローバル・パートナーシップの名にふさわしい、幅広い分野での議論を行った。
(3)インドは、我が国と自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有する南アジアの大国であり、中東から東アジアへのシーレーン上に位置し、我が国にとり戦略的にも重要な存在。今回のシン首相訪日を通し、2012年に国交樹立60周年を迎えた日インド関係は新たな段階へと歩みを進めたと評価できる。